泌尿器領域

膀胱がんに対する治療

表在性膀胱がんの場合には経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)でがんを切除できる可能性が高く、膀胱鏡検査などにより膀胱がんが疑われる所見がある場合、診断的治療としてTUR-Btを行っています。切除組織の顕微鏡検査でがんの悪性度、深達度などを正確に評価し追加治療の必要性を検討します。

【経尿道的膀胱腫瘍切除術】

手術は腰椎麻酔(下半身麻酔)もしくは全身麻酔下で行っています。 まず尿道から内視鏡を挿入して病巣部を確認します。電気メスの鉗子を挿入し病巣部の一括切除を行います。術後病理診断の結果、がんが粘膜~粘膜下層にとどまっていて完全に取り切れていれば治療は完了します。しかし、表在性がんは膀胱内に再発しやすいという特徴があり、再発のリスクが高いと判断した場合には、予防的に抗がん剤やBCGを膀胱内に注入することがあります。

【経尿道的膀胱腫瘍切除術の実際】

 

尿管結石に対する治療

腎臓で生成された尿は、尿路(腎盂・尿管・膀胱・尿道)を通り排出されます。この尿路にできた結石を尿路結石といい、上部尿路結石(腎結石・尿管結石)と下部尿路結石(膀胱結石・尿道結石)に分けられます。上部尿路結石が尿路結石の約95%を占めます。尿管結石の典型的な症状として、突然起こる激しい痛み(腹痛、腰背部痛)や血尿、吐き気、嘔吐などがあります。ただ、腎結石の場合、多くは自覚症状もなく、偶然に検診で見つかることも少なくありません。

結石の大きさが小さい場合は、通常は保存的治療となります。保存的治療では、内服薬の服用を続けながら水分摂取量を増やすことで尿量を増やし、自然排石(尿と一緒に石を排出すること)を促します。痛みがある場合は、痛みを緩和するための薬を服用していただきます。自然排石が困難と判断された場合は、手術の適応となります。当センターでは、経尿道的または経皮的腎瘻による結石砕石術(TUL、PNL、TAP/ECIRS*)を行っています。

*TUL(経尿道的結石砕石術)を併用してPNL(経皮的腎・尿管砕石術)を同時に行う治療法。

【経尿道的尿路結石砕石術】

手術は脊椎麻酔(下半身麻酔)または全身麻酔下で行っています。経尿道的尿路結石砕石術(transurethral lithotripsy:TUL)とは、軟性尿管鏡(細径内視鏡)を尿管や腎まで挿入し、直接結石を確認しながらレーザーを用いて破砕する治療法です。直接観察することで、安全かつ確実に砕石することが可能となり、割れた結石はバスケット状のカテーテルを使用し、身体の外へ取り出します。

軟性尿管鏡(細径内視鏡)

尿路結石治療レーザー装置

【経尿道的尿路結石砕石術の実際】

またTULが困難な症例に対して経皮的腎・尿管砕石術(percutaneous nephrolithotripsy:PNL)を行っています。PNLは、まず腎瘻(じんろう)という背中から腎臓に小さな穴を開け、その穴から内視鏡を入れ、結石を砕石し、取り出す治療です。TULとの違いは、比較的大きな結石に対して行われることが多い手術です。破砕した結石片は、経皮的に体外へ取り出すことができますが、その反面、腎臓に穴をあけるので出血のリスクもあります。入院期間は、約1週間前後です。当センターでは、脊椎麻酔(下半身麻酔)または全身麻酔下で行っています。

【経皮的腎・尿管砕石術の実際】

 

腎臓がん、腎盂がん、尿管がんに対する治療

腎臓がん、腎盂がん、尿管がんに対する標準的な手術方法は従来約20cmの皮膚を切開し、がんのある腎臓および尿管をすべて摘出する腎尿管摘除術とされてきました。当センターでは腎臓・腎盂、尿管の腫瘍に対して低侵襲な腹腔鏡下腎(尿管)腫瘍手術を施行しています。従来の開腹手術と比較し腹腔鏡手術を行うことのメリットは、①傷が小さいこと、②出血量が少ない、③術後の回復が早いことです。

【腹腔鏡下腎(尿管)摘除術】

腎臓の動静脈を切除し、腎臓を周囲の組織から剥離した後、腫瘍の種類、位置、大きさによって腹腔鏡下腎摘除術(腎臓を摘出する術式)、腹腔鏡下腎尿管摘除術(腎臓から膀胱までつながる管である尿管および膀胱の一部ごと摘出する術式)を行っています。腎盂腫瘍・尿管腫瘍は同じ側の尿管を残すと再発する可能性が高いため、腎臓・尿管・膀胱の一部までを一塊にして取る術式が適応となります。腹部正中に約6cmの小切開創をおき、腎臓を体外に摘出します。

【腹腔鏡下腎(尿管)摘除術の実際】

 

副腎腫瘍に対する治療

【腹腔鏡下副腎腫瘍手術

副腎は後腹膜という奥深い場所にあります。他の臓器が固定されている膜を切開して、剥離という動作で副腎以外の臓器の場所を移動させ、副腎を露出します。副腎は血管、神経、結合組織、脂肪組織で周囲と固定されていますので、剥離、切開、止血を繰り返しながら周囲と切り離し摘出します。バックに入れて体外へ摘出しますが、腫瘍の大きさに合わせて皮膚切開を追加します。

【腹腔鏡下副腎腫瘍手術の実際】